病害虫対策や追肥について
住宅街で植物を育てる際は、病害虫の防除やプランター土壌の肥料不足が懸念されます。
ホームセンター等では病害虫対策のために化学農薬や様々な肥料が販売されていますが、森林ではそのような薬品を使わずとも健全に生育しております。
このような様子を見ると、果たして薬品等は本当に必要なのでしょうか。
樹木へは収穫を目的とした野菜等ほどの徹底した管理は必要ない
私たちが食べている野菜や果物などの作物は甘くて美味しいです。
これはより甘くなるように品種改良されたものが多く、害虫や病原菌にとっても美味しいため、病害虫の被害は大きくなります。
そのために、化学農薬を散布し、収穫量を高めるため肥料を与えます。
これに対して、樹木にも病害虫は発生しますが、化学農薬や肥料を施していない状況でも病害虫が原因ですぐに枯れることはありません(例外はあります)。
数年手入れの施されていない庭木が元気よく生育している様子がよい例です。
樹木は作物よりも生命力が強く、むしろ貧栄養気味の環境を好みます。
作物をより美味しく、そしてより多く収穫するために農業技術は発展してきましたが、これを庭園管理に取り入れると、かえって逆効果になっているようです。
過剰な施肥は樹木を太らせて抵抗力を弱めてしまい、化学農薬の散布は益虫や土壌内の微生物までも殺虫し樹木の生育を弱らせてしまう結果を招いています。
私たちの健康を維持する「自然治癒力」が注目されているように、樹木へも生命力が高まるような方策が必要でしょう。
生命力の高い樹木は、基本的に病害虫の被害が少ないのです。
こちらでは、人体や樹木への影響が少ない自然農薬や肥料をご紹介いたします。
米の醸造酢で作る自然農薬
米の醸造酢は病害虫防除の基本剤となります。害虫の忌避剤としてよく使用され、蝶や蛾、特に甲虫類はこの匂いを嫌って近寄らなくなります。
カビを抑える殺菌効果もあり、多くの病気(ウドンコ病等)にも効果的です。さらに植物の活力剤としても活用でき、葉は艶やかになり、病害虫にも強くなります。ただし、殺虫効果はありません。
作り方
米の醸造酢を水で25~50倍に薄めて使用します。効果を持続させるには、展着剤として少量の石鹸を混ぜるとよいでしょう。
使い方
時期:病害虫が発生する時期の夕方に散布。活力剤としては通年使用可。
頻度:7日おきに5回程度散布。
方法:葉裏にもかかるようにたっぷりとスプレー等で散布する。土に染み込んだ酢は植物の根を太らせ、養分の吸収力を高める効果がある。
草木灰という自然農薬
殺虫効果がある自然農薬です。葉面に散布すれば病原菌や虫は寄り付きません。毛虫等に直接散布すると殺虫できます。そして、草木灰にはカリ、リン酸が含まれており肥料にもなります。
作り方
草木灰を作るには手間がかかります。JAやネットショッピング等で販売していますので、購入されることをお勧めします。
使い方
時期:病害虫が発生する時期。冬の寒肥えや花後の追肥としても使用可。
頻度:7日おきに3回程度散布。
方法:草木灰をガーゼ等につつみ、植物の上から葉全体にうっすらと撒く。寒肥えや追肥に使う場合は、表土に草木灰を混ぜる(化学肥料ではないので使い過ぎても害とはならない)。
油かす液肥
プランターを使用した花壇は、ときに土壌の養分が不足し、追肥を行う必要がでてきます。追肥でよく用いられるのはバランスの良い有機質肥料である油かすですが、これをそのまま施すと悪い菌の繁殖源になります。
油かすを水につけ、液肥として用いるとよいでしょう。植物の3大栄養素がバランスよく含まれ、速効性があります。ただし、油かす液肥も与え過ぎると病虫害発生の原因となることに留意して下さい。
植物の実つきや花つきが悪くなった時は、草木灰と油かす液肥を与えるとより効果的です。ただし、樹木は養分不足等に関係なく、実つきがよかった次の年は、実つきが悪くなることがあります。
作り方
油かすと水を1:10でペットボトル等の容器に入れます。ガスを逃がすために密閉はせず、日陰に置いて発酵させます。発酵してくると非常に臭くなりますので外で保管して下さい。約2か月で出来上がります。
アブラムシの駆除
アブラムシへはスプレーで牛乳をかけると効果的です。牛乳は乾燥すると薄い膜を張って縮むため、アブラムシは窒息死するようです。晴れた日の朝に葉の裏表へ十分にかければ夕方には殺虫できています。
コーヒー(インスタントコーヒーでも可)をかけることも効果があるようです。コーヒーは他にもダニの防除や病気の予防にも効果があります。
アブラムシはアリと共存共生しており、アリが来なくなるとアブラムシは生存できません。アリを樹木へ寄せ付けないようにするには、ワカメの煮汁が効果的です。この液をアリの通り道や集まる場所へかけると、アリはこの液が苦手なようでいなくなります。ワカメの煮汁は植物の栄養にもなり、葉面へ散布すると葉の色が濃くなります。
ワカメ煮汁の作り方
ワカメ二握りを水1リットルで煮出す。
殺虫剤(アセビ液)
毛虫やダニ、シラミ等多くの虫に効く、強力な殺虫剤となります。益虫の保護を気にされる方は、醸造酢農薬を散布し6~24時間後に殺虫剤をかけて下さい。
作り方
アセビの葉を一握り、水1.8リットルに入れて10分間煮出します。展着剤として石鹸10グラムを溶かすと効果が持続します。これを冷やして布でこします。
殺虫・殺菌剤(雑草三種混合液)
アセビ液のように毒性は強くないですが、草木が自らの身を守る力を利用するので、植物や周辺環境へもやさしい効果を発揮します。雑草はできるだけ病害虫に強い3~5種を選びます。
病害虫に強い代表的な草木は以下をご参照下さい。
春(害虫用)
ボケ、ホトケノザ、ツバキ、アセビ、チューリップ、ヒナゲシ、ダリア、マリーゴールド、ユキノシタ、シャクナゲ
春(病気用)
ハコベ、クロッカス、レンゲ、アザミ、ツクシ、タンポポ、キンセンカ、ボタン、ナズナ、キランソウ、フキノトウ、コブシ
夏(害虫用)
アサガオ、ツキミソウ、オシロイバナ、アセビ、ヒガンバナ、ダリア、マムシグサ
夏(病気用)
サルビア、コスモス、アサガオ、ヒルガオ、ホウセンカ、スギナ、ヤマユリ、ハナミョウガ、ノカンゾウ、オミナエシ
秋(害虫用)
マリーゴールド、アセビ、キク、ダリア、ドクダミ
秋(病気用)
スイカズラ、コギク、カンナ、スギナ、サザンカ、ゲンノショウコ、ナンテン、カワラケツメイ、ムラサキシキブ、タケザサ、クコの実、リンドウ
冬(害虫用)
「秋の野草の乾燥したもの」
土壌害虫防除薬:イヌザンショウ、カワラケツメイ、ヨモギ、スギナ、ウシセンブリ、ドクダミ
冬(病気用)
「秋の野草の乾燥したもの」
作り方
それぞれの花、葉をつけたまま一握りずつ、水1リットルに入れて10分間煮出します。展着剤として石鹸10グラムを溶かすと効果が持続します。これを冷やして布でこします。