美しく育てる新しい剪定方法
雑木林の中で大きな樹木を見上げると、自然に成長している木々は、光を求めて美しく枝を伸ばしています。その様はとても芸術的で、生命力を感じます。
せっかく庭に樹木があるならば、このような自然の美しさを楽しめたらと思いますが、街なかや庭にある樹木は様々な理由から剪定をする必要があります。
その理由とは、枝葉を伸ばし放題にすると、道路や通路を妨げたり、建物を傷付けたり、視界を遮ったり、枝ぶりや根に欠陥があると落枝や倒木事故を引き起こす可能性があるからです。
弊社の剪定は、雑木林の樹々のように美しく伸びる樹木本来の姿を楽しみ、植物が持っている「いやし・うるおい」などの様々な効果を高めて、私たちの生活の質が向上されることを目指しています。
※ 弊社で植栽をデザインしていない庭園では、多くの場合、一般的な剪定方法(樹形全体をコンパクトにまとめる方法)を使用することが適しています。一般的な剪定方法
◆庭木や緑化樹木の問題点
住宅地の庭木や都市部の緑化樹木は、樹木の生育に支障を及ぼす西日、乾燥、排気ガス等の公害に耐久性のある樹種を選んで植えています。
ただ、このような樹種は萌芽力が強いため、毎年多くの枝葉を成長させます。そして、樹高が15m以上と大きくなるか、あるいは横への広がりが大きくなります。そのため、歩道や構造物などの人と密接する緑地は、剪定の度に多くの枝葉を切り取る必要性が生じます。
このような樹種は、庭木では主にヤマモモ、マテバシイ、ゲッケイジュ、キンモクセイ、ハクモクレン、コブシなどが挙げられます。
多くの枝葉を切り取ることの問題点としては
1. 剪定の反動で枝葉はより多く伸長し、また樹形の見栄えが悪くなる不定芽も多く萌芽して、光を遮る鬱蒼とした樹冠になる
2. 剪定痕から腐朽菌が入り、大枝が枯れて落下することや、幹が空洞化して折れることがあり、事故を引き起こす原因となる。したがって、安全管理のために、樹木の状態を確認する必要がある
3. 剪定で急に多くの葉を失いエネルギーバランスが崩れることで、樹木へ多大な生理的ストレスが加わり、病害虫の被害リスクが高くなる
4. 何よりも毎年の剪定管理の手間が大きくなり、工費が負担となる
これらの理由から、一時は庭木を植えずにコンクリートのみの外構が流行った時期がありました。
しかし、コンクリートのみでは、真夏の照り返しによる猛暑、冬の乾燥、砂埃、西日の影響などが助長され、庭木の存在が見直されています。
植物にとって過酷な環境である住宅地や都市部では、公害に耐久性があり、萌芽力の強い樹種が好まれて植栽され、その後の剪定管理では多くの予算を必要としていました。しかし、近年では土壌改良の技術が発達し、自然樹形が美しくて剪定管理の手間が小さい樹種を住宅地や都市部で育生できるようになってきています。
住宅地や都市部の緑地は、人と密接に関係する空間であるために、植える樹種の将来的な大きさを考えることが大切です。緑地が狭小な空間では、将来巨木になる樹種を植えると無理な剪定管理が必要になりますが、狭小な空間に見合う樹種を植えれば、弊社の剪定手法を使用できます。これは、剪定管理費用を抑えて緑地の美しさ、癒し効果を高め、台風時の倒木や折損事故が起こる可能性をより小さくします。公園のように広い空間では樹木を大きく育てることができ、弊社の剪定手法を用いれば、費用対効果を高めることになるでしょう。
◆弊社の剪定手法
弊社の剪定手法は、上方の枝を選択的に伸ばして、枝ぶりの欠陥を修正する方法です。つまり、この剪定方法では樹木の高さを切り下げないため、樹木は潜在的な大きさへ成長します。
弊社の剪定手法を使用した上で樹木の高さを低く保つには、樹種の選定が大切になります。樹木の大きさは環境条件によって変わるため一概には言えませんが、樹種からある程度は予想できます。例えば、希望する樹木の高さが2~3m程度でしたら低木類(クロモジ、ヤマコウバシ、ナツハゼ等)、5~7mだと小高木類(ソヨゴ、カマツカ等)、7~10mでは高木類(アオダモ、ヤマボウシ、エゴノキ等)が目安となります。このように、樹種によって大きさが異なる理由は、遺伝的という説があります。
弊社の剪定方法を使用した庭園デザイン例は、以下のリンクをご参照くださいませ。
植栽をデザインする
住宅地などの狭小地で、樹木の高さが15m以上と巨木になるカシ類(シラカシ、アラカシ)やコナラなどを剪定管理する際は、近隣への配慮を考えると、樹高を切り下げない剪定方法は無理が生じます。このような場合は、樹木を株立樹形に仕立て、弊社の剪定方法を用いながら大きくなった株を小さい株へ更新する剪定管理方法を行っています。巨木になる樹種で株立樹形に仕立てることができない場合では、樹木の大きさを縮小させることが必要になるため、弊社ではお客様のご要望を伺って、樹木が育っている場所や状況、樹種から剪定方法を選択するようにしています。
広い緑地でしたら、巨木となる樹種でも弊社の剪定手法を用いて、費用対効果を高めることができます。
◆樹木の高さを切り下げないメリット
樹木の大きさを縮小させる剪定では、剪定後に枝葉の伸長が活発になります。そのため、越境枝や通路を妨げる枝など私たちにとって不都合となる枝の発生が目立つようになります。
一方で、弊社の剪定方法では枝葉の伸長が樹木本来の成長速度とほぼ変わらないため、安定して成長し、不都合となる枝を剪定すれば、しばらくは発生しません。そのため、整枝剪定が容易になり、私たちと生活する空間を共有しながらいつまでも美しい樹姿を保つことができます。その上、剪定の必要性は多くの場合将来的に少なくなり、剪定工費が低減できるほか、樹木の効果が高まり(温度湿度調整、防塵、防風、心理的安らぎ、など)、病虫害の発生が少なくなります。
これらは私が実際に剪定作業をして気付いたことです。樹木は日光を浴びるために上方へ枝葉を伸ばすのが本来の姿であり、これに基づいて育生しているからこそのメリットだと思えます。このメリットを詳しく知るためにシラカシを用いた剪定の実験をしました。その実験の結果および考察を学術論文としてまとめ、只今査読審査中です。もし論文が受理された際は発表させていただきます。
剪定の研究
◆スペースがあれば大きい樹木を安全に育てられます
マンションの緑地、公園、駅のロータリー、一部の住宅地など、樹木の枝を伸ばせるスペースがあれば問題なく弊社の剪定方法を利用できます。
大きい樹木は、台風などの強風で太い枝が折れたり、倒木したりすると大変な事故に繋がりかねません。ただ、枝折れや倒木は原因があって起こります。
太い枝が折れる原因は「入り皮」や「幹と枝の直径比が小さい叉」などが知られており、これを修正するためには私たちの剪定方法が有効です。
倒木の原因は主に「ぶつ切り」といった過剰に枝葉を切り落とし、剪定後には葉をほぼなくす剪定方法の実施だと思われます。この剪定方法の実施後は、根の大部分が腐朽・枯死するために根の支持力が大幅に低下しますが、幹は太く重くなっていくので、根が幹の重さを支えきれなくなると考えています。この他、幹が空洞化して折れることや質の悪い土壌環境の影響も挙げられます。
私たちの剪定方法では枝葉を切り落とす量が少なく、樹木の成長を損ないません。また、樹木を植える際に土壌改良をしっかりと行えば、根が強く張り、樹体を支える支持力が高くなります。これらから、倒木の危険性はとても小さくなります。
◆大きい樹木は日当たりの悪さや落葉の多さが・・・
マンションの緑地では「樹木の木陰で日当たりが悪くなった」などのご意見を伺います。これは一つの考え方ですが、落葉樹は夏に暑い日差しを遮って涼しくなり、冬には落葉して暖かい日差しが入るので、ご納得いただけます。常緑樹では晩秋に枝葉を透かして、冬に木漏れ日を入れる方法もあります。また、「木陰だと洗濯物が乾かない」などのご意見もありますが、直射日光を当てると衣類を傷めることがあるので、木漏れ日で干す程度が丁度良いのかもしれません。
落葉が多くなることも悩みのタネですが、剪定の費用が抑えられれば、落葉清掃は簡単な作業なので安価で依頼できますし、在宅の方が清掃することも可能かと思います。雨どいなどへ落葉が堆積するようでしたら、剪定作業時に雨どい清掃も依頼していただければ問題ございません。
◆永年続く剪定管理のことを考えると
既にスペースに対してあまりに大きくなり過ぎた樹木や、樹木の量が多すぎて茂り過ぎてしまっているお庭では、樹木の本数を減らしたり、違う樹種へ植え替えるなどを行って、庭をより良い状態に改善することも検討していくとよいと思います。
ただ、植え替えができないなど、状況によっては、剪定工費は高くなりますが毎年または数年に一度、樹木の大きさをコンパクトにまとめる剪定をした方がよい場合もあります。
一般的な剪定方法
私たちが提案する樹木は、そのお庭のスペースに合わせて、植える木が将来どれくらいの大きさになるかという最大樹高を考えて植物を選びます。また、低木と高木を組み合わせて、樹木同士が立体的に住み分けられるように考えて植栽します。計画段階から、将来の成長を考えておくと、無理な剪定で樹木に負担をかけることなく、永い間美しい枝ぶりを楽しむことができるようになります。